AnthropicとVercelのエージェント基盤、対応関係を整理する
エージェント開発の関心が「作れるか」から「本番でどう動かし続けるか」に移るなかで、2026年に入ってAnthropicとVercelが相次いでその基盤を揃えました。Anthropicは4月にClaude Managed Agentsを、Vercelは6月のShip 26でeveと周辺サービスを発表しています(Ship 26の全体はまとめ記事に書きました)。
似た層の製品が別々の語彙で出てくると、どれとどれが対応するのかが分かりにくくなります。この記事では両社の公式ドキュメントをもとに、コンポーネントの対応関係を1枚の見取り図に整理します。
両社のスタックを並べる
エージェント基盤は、おおまかに「ハーネス(エージェントループ)」「セッションの永続化」「コードを実行する隔離環境」「外部サービスの認証」「モデル」の5層に分けられます。両社の製品をこの層に置くとこうなります。

いちばん上の「完成品のエージェント」は基盤そのものではなく、その上に作られた応用です。Ship 26で発表されたVercel Agent(本番を監視して修正PRまで出す)はeveとこの基盤の上に構築されていて、Anthropic側でいえばClaude Codeが近い立ち位置になります。
| レイヤー | Anthropic | Vercel |
|---|---|---|
| ハーネス | Claude Agent SDK(自前運用)/ Managed Agents(ホスト) | eve(OSS、コードで書く) |
| 永続セッション | Managed Agentsのセッションログ | Vercel Workflows |
| 実行環境 | クラウドサンドボックス(セルフホスト可) | Vercel Sandbox |
| 外部サービスの認証 | credential vault | Vercel Connect |
| モデル | Claude | AI Gateway(任意のモデル) |
Anthropicは縦統合、Vercelは部品の組み合わせ
同じ層を埋めていても、パッケージングの哲学は対照的です。
AnthropicのClaude Managed Agentsは、ハーネス・セッションログ・サンドボックス・credential vaultを1つのAPI製品に縦統合したホスト型ランタイム(ベータ)です。エージェントはコードではなく、モデル・プロンプト・ツール・MCP・スキルをAPIで設定して定義し、イベントを送って対話します。
エンジニアリングブログはこの構造を「脳(Claudeとハーネス)と手(サンドボックスとツール)の分離」と説明しています。脳とセッションログはAnthropic側に置かれる一方、手であるサンドボックスだけは自社インフラにも置けます。
ハーネスを自分で動かしたい場合はClaude Agent SDKという選択肢もありますが、その場合は永続化もサンドボックスも自分の仕事になります。
Vercelのeveは、コードで書いてデプロイするOSSフレームワークです。指示やスキルはMarkdown、ツールはTypeScriptという書き味はAgent SDKに近く、配管はドキュメントに明記されているとおりVercelのプラットフォームサービスが担います。
内訳は、永続セッションがVercel Workflows、コード実行の隔離がVercel Sandbox(Firecracker microVMの汎用的なcompute primitiveで、eveと独立に単体でも使えます)、外部サービスの認証がVercel Connect、モデルがAI Gateway経由で任意です。同じ問題を「フレームワーク+独立した部品」の形で解いています。
どちらで組むか
Vercel側を選ぶことは「Claudeへのロックインを避ける」というより、「モデルのロックインをプラットフォームのロックインに交換する」取引だと思います。
ただし逃げ道の広さは違います。Managed Agentsはサンドボックスだけ自社に置けるものの、ハーネスとセッションはAnthropicに預ける前提です。eveはハーネスがOSS(Apache 2.0)で、ローカルはDockerでも動きます。
もう1つの軸は、いまの資産がどちらの語彙で溜まっているかです。Claude CodeやAgent Skillsで社内の知見が溜まっているチームは、Anthropicスタックなら概念がそのまま通じます。フロントをVercelに置いているプロダクトなら、eveは同じデプロイフローに乗ります。
所感
整理してみて面白かったのは、層の切り方が両社でほぼ同じだったことです。ハーネス、永続セッション、サンドボックス、クレデンシャル。エージェントを本番で動かすための共通アーキテクチャが、会社をまたいで固まりつつあるように見えます。
どちらを選んでも「Markdownの指示+型付きツール+隔離実行」という作り方は共通なので、いま書いているエージェントの資産はどちらに転んでも無駄になりにくいはずです。Vercel Sandbox、Workflows、Connectといった個々の部品は、それぞれ別の記事で掘っていくつもりです。
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