【詳説】プロダクト・マーケット・フィット
Anycloudプロダクトマネージャーの南部です。
以前、サービスの成功を目指すための指針、スタートアップ・フィット・ジャーニーについての解説記事を執筆しました。
今回はその中でも、最重要といえるプロダクト・マーケット・フィットのフェーズを深堀って解説したいと思います。
Product/Market Fitとは
Solution/Product FitでMVP(実用最小限のプロダクト)を開発した後、Product/Market Fitを目指すフェーズでMVPは市場に投入されることになります。ここでの目的は、プロダクトが市場に求められるものになっているかの検証です。
重要なのは、プロダクトを市場に投入しつつも、即座にスケールを目指さないということ。市場に広く当てないと、市場に求められているかわからないのではないか、と考えがちですが、「バケツに穴が空いている状態」での時期尚早なスケール(Pre-mature scaling)はお金を無駄にするだけです。
以下でProduct/Market Fitのフェーズをさらに3段階に分けて解説していきます。
1. 「顧客が喜んでいるか」の検証
まず大切なのは、ユーザーのエンゲージメントを計測し、喜んで使ってくれるユーザーがいるのかを確認することです。
AARRRモデルで考えると、エンゲージメントに該当するのは「Activation(利用の開始)」「Retention(利用の継続)」「Revenue(購入)」の3つとなります。
顧客の、使ってみたい、使い続けたい、お金を払いたいという心理が可視化される指標であり、顧客の満足度が推察できます。
継続率は、コホート分析やリテンション・カーブ等で可視化することが重要です。
なお、プロダクトを市場に投入した初期は、無料トライアルなどを展開し、あらゆる種類の顧客が集まってくる可能性があります。
この場合、すべての顧客層を満足させる必要はありません。それよりも重要なのは、プロダクトが特に刺さっている顧客層を見つけることです。
このフェーズで重要な概念・ツール・指標
- MVP(Minimum Viable Product)
- Do things that don’t scale
- ショーン・エリス・テスト(Product/Market Fit Survey)
- NPS
- エンゲージメント( AARRR のうち、Activation, Retention, Revenue )
- コホート分析
- アーリーアダプター
- カスタマーサクセス
- セールス
参考記事
2. 「顧客は熱狂しているか」の検証
プロダクトが刺さっている顧客が見つかれば、それら少数の顧客を熱狂的なファンにし、その数を増やしていくことにフォーカスします。
熱狂的なファンは、口コミを生んでくれます。そしていつしか穏やかに燃えていた火が自然と燃え移り、大きな炎へと変わっていきます。
ショーン・エリス・テストは、そのプロダクトがなくなったら残念に思うユーザーが何%存在するのかを確認するテストです。このテストを指標とし、ユーザーが愛しているものと、愛する障壁になっているもの、二つだけにフォーカスして、プロダクトを改善していきます。
逆にいえば製品が使えなくなっても残念に思わない顧客からのフィードバックは、丁寧に受け流すことも重要です。
このフェーズで重要な概念・ツール・指標
- MVP(Minimum Viable Product)
- Do things that don’t scale
- AARRR (特に、Activation, Retention, Revenue)
- リテンションカーブ
- コホート分析
- チャーンレート
- アーリーアダプター
- カスタマーサクセス
- セールス
参考記事
補足
PMFの判断指標として、ショーン・エリス・テストや、リテンションカーブなどを紹介したが、「PMFしていない」ことは定性的に判断できると言われています。
PMFの考えを広めた、Andreessen Horowitzの創業者マーク・アンドリーセンは、以下のように語っている。
顧客が製品に価値を感じていない、口コミが広がっていない、利用量がそれほど急速に増えていない、プレスリリースへの反応もイマイチ、ぼんやりしている、セールスサイクルが長い、案件がなかなか成約しない、といった状況はPMFが起こっていないと判断できる。
参考:スタートアップへの Pmarca ガイド「唯一の重要なこと」
3. 「スケール可能か」の検証
PMFで最後に検証することは、ユニットエコノミクスが健全な状態で、スケールすることができるかの検証です。
ユニットエコノミクスとは、1単位あたりの経済性(例えば、顧客一人あたりで黒字かどうか)のこと。
ここまでのフェーズでは、熱狂的なファンを生み出すことが重要であり、採算が取れていない可能性は大いにあります。特に株式での資金調達を行い、急速な成長を目指すスタートアップにおいては、むしろそうあるべきともいえるでしょう(スモールビジネスにおいてはもちろんその限りではありません)。
しかし、ユニットエコノミクスが達成されていない状況でスケールに走れば、スタートアップは資金が枯渇(バーンアウト)することは自明の利です。
そうならないために、LTV(顧客生涯価値)をあげ、CPC(顧客獲得コスト)を下げる必要があります(ユニットエコノミクスとは、LTVとCPCの差で求められるため)。
ここでついに、AARRRモデルの部分最適に留まらず、全体の最適化へと移行することになります。
このフェーズで重要な概念・ツール・指標
- ユニットエコノミクス
- LTV
- CAC(CPA)
- AARRR
- ネットワーク効果
- 鶏卵問題
- マジックモーメント(マジックナンバー)
- トラクション
補足(CPCを下げる)
PMFを経て、スケールのために大きく資金調達を目指す場合、トラクションを見つけることが投資家への説得材料になります。トラクションというのは、一番効率よく顧客を獲得できるチャネルのこと。
そのため、最初から決め打ちで獲得チャネルを固定するのではなく、効果検証が可能な最低限の投資額であらゆる獲得チャネルを試すことが重要となります(すなわちマーケティングにおいても、仮説検証が重要ということ)。
まず、顧客獲得においては、オーガニックとPaidを分けて考えましょう。また、それぞれのチャネルには、メリット/デメリットがあります。
オーガニックとは、検索流入や、オウンドメディアなど。これらは直接的な広告費などはかかりませんが、例えばオウンドメディアの運営であれば継続的な人件費がかかることになります。一方で、顧客層のナーチャリングには非常によい手段ともいえます。
Paidはweb広告などの手段となります。これらは即効性はありますが、競合により費用が高騰したり、見込み顧客の刈り取りまでの期間が短い可能性もあります。
終わりに
サービス立ち上げにおいて、まず目指すべきプロダクト・マーケット・フィット。
Anycloudでも、クライアントさんのサービス立ち上げのご支援において、PMFへの道のりを意識して着実なご支援を目指しています。
今後、AnycloudがPMF請負人として、クライアントの皆様から信頼いただけるよう、プロダクト・マネージャーを中心に、日々研鑽を詰んでいきたいと考えています。