Agent Skillsとは何か、MCPはいらなくなるのか調べてみた

最近Xで「Agent Skills」という言葉をよく目にするようになりました。「Skillsだけ使っててMCP使わなくなった」という声も聞く中で、「本当にMCPっていらなくなるの?」「そんなにSkillsってすごいの?」と思い、改めて調べてみました。
この記事では、MCPの簡単な歴史を振り返りつつ、Agent Skillsが何なのか、具体的に何ができるのか、そしてMCPとどう使い分けるべきなのかをまとめます。
目次
- MCPとは何だったのか
- Agent Skillsとは何か
- Skillの構造
- Progressive Disclosure(段階的開示)という設計思想
- コード実行という強力な武器
- Agent Skillsで具体的に何ができるのか
- 例1: Notionの会議準備Skill
- 例2: 金融分析の類似企業分析Skill
- 例3: PowerPoint作成Skill
- MCPとAgent Skillsはどう使い分けるべきか
- MCPが得意なこと
- Skillsが得意なこと
- 実際のところ
- 「MCPいらなくなった」は本当か?
- 課題と制約
- クロスプラットフォームの制約
- 共有の仕組み
- ランタイム環境の制限
- セキュリティについて
- Skillsの開発ベストプラクティス
- 評価から始める
- スケールを考えた構造設計
- Claudeの視点で考える
- Claudeと一緒に反復開発する
- おわりに
- 参考リンク
MCPとは何だったのか
まずはMCPから。MCP(Model Context Protocol)は2024年末にAnthropicが発表した、AIアプリケーションと外部システムをつなぐためのオープンな標準です。
わかりやすく言うと、「AIのためのUSB-C」というのが公式の説明です。USBケーブルがいろんな機器を接続できるように、MCPはAIをいろんなツールやデータソースに接続できる、と。
たとえば、MCPを使えばClaudeはGoogle Driveのファイルを読めるし、GitHubのissueを作成できるし、Notionのページを検索できます。MCPサーバーというものを立てることで、AIに新しい「能力」を与えられるわけです。
発表当初から大きな反響があり、OpenAI、Google、Microsoftといった他社も採用を発表。エコシステムが急速に広がりました。
Agent Skillsとは何か
そして、Agent Skills。これは2025年10月にAnthropicが発表した仕組みです。
Anthropicのエンジニアリングブログでは、Skillsを「新入社員のためのオンボーディングガイドを作るようなもの」と説明しています。つまり、Claudeに「この作業をするときはこうやる」という手順や知識を教えるための仕組み、ということです。
Skillの構造
Skillは、ディレクトリの中にSKILL.mdというファイルを置くだけで作れます。このファイルは必ずYAML形式のメタデータから始まる必要があります。

nameとdescriptionは必須項目で、これがSkillの「顔」になります。
Progressive Disclosure(段階的開示)という設計思想
Skillsの最も賢いところは、progressive disclosure(段階的開示)という設計思想です。これは、よく整理されたマニュアルが目次→各章→詳細な付録という構造になっているのと同じで、必要な情報だけを段階的に読み込む仕組みです。
レベル1:メタデータ(常に読み込まれる)
エージェント起動時に、すべてのSkillのnameとdescriptionだけがシステムプロンプトに読み込まれます。これはSkillごとに約100トークン程度。たくさんSkillをインストールしても、コンテキストウィンドウをほとんど消費しません。
この段階では、Claudeは「このSkillがある」「こういう時に使う」ということだけを知っている状態です。
レベル2:本文(トリガーされたときに読み込まれる)
ユーザーのメッセージを見て、Claudeが「このSkillが必要だ」と判断したとき、初めてSKILL.mdの本文全体をbashコマンドで読み込みます。この段階で、具体的な手順や指示がコンテキストに入ります。
たとえば、「このPDFのフォームに記入して」と言われたら、PDF SkillのSKILL.mdを読み込む、という具合です。
レベル3以降:追加リソース(必要に応じて読み込まれる)
SKILL.mdが大きくなりすぎる場合や、特定のシナリオでしか使わない情報がある場合、追加のファイルを同じディレクトリに置いておくことができます。
pdf-skill/
├── SKILL.md (メインの説明書)
├── forms.md (フォーム入力の詳細ガイド)
├── reference.md (APIリファレンス)
└── scripts/
└── extract.py (ユーティリティスクリプト)
SKILL.mdから「詳しくはforms.mdを見て」と参照しておけば、Claudeは必要なときだけその追加ファイルを読みます。フォーム入力が不要なら、forms.mdは読み込まれません。
まとめると下記の画像のようになります。
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この設計により、Skillに含められる情報量は事実上無制限になります。使われないファイルはコンテキストを消費しないからです。
コード実行という強力な武器
Skillsにはもう一つ、重要な機能があります。それは実行可能なコードを含められることです。
LLMは多くのことができますが、「リストをソートする」みたいな決定論的な処理は、トークンを生成してやるより普通にコードを実行した方が圧倒的に効率的です。
たとえば、PDF SkillにはPDFのフォームフィールドを抽出するPythonスクリプトが含まれています。Claudeはこのスクリプトを実行できますが、重要なのはスクリプトの内容もPDFファイル自体もコンテキストに読み込まれないということ。
実行結果だけがClaudeに返ってきます。これにより、大量のトークンを節約しつつ、確実で再現性のある処理が実現できます。
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Agent Skillsで具体的に何ができるのか
理論だけでなく、具体例を見てみましょう。
例1: Notionの会議準備Skill
NotionのMCPサーバーと組み合わせて、「Meeting Intelligence」というSkillを使うと下記のようになります。
- 関連プロジェクトページを自動検索
- 前回の会議ノートを確認
- 参加者情報を収集
- 内部用の事前資料と外部向けアジェンダの両方を作成
- Notionに適切な形式で保存
MCPがNotionへのアクセスを提供し、Skillが「何をどの順番でやるか」を教える、という役割分担です。
例2: 金融分析の類似企業分析Skill
Anthropicが金融業界向けにリリースした事前構築Skillの一つ。
MCPサーバーを通じてS&P Capital IQ、Daloopa、Morningstarから市場データを取得し、Skillが「評価手法を適用し、コンプライアンス基準に沿った形式で出力する」という知識を提供します。
従来なら何時間もかかっていた作業が、一貫した品質で自動化できる、というわけです。
例3: PowerPoint作成Skill
Anthropicが提供する事前構築Skillの一つ。プレゼン資料を作りたいとき、Skillが:
- スライドの構成を考える
- 適切なレイアウトを選ぶ
- グラフや図表の配置を決める
- デザインルールを適用する
といった知識を持っています。普通にお願いするだけでは出てこない、プロフェッショナルな仕上がりになります。
その他に公式やawesomeから具体的なスキルの例を確認できます。
⚠️ 上記で説明したようにスキルはコード実行も行えます。そのため、オープンソースのスキルを内容をよく確認せずにそのままコピー&ペーストして利用すると、重大なセキュリティ問題につながる可能性があります。利用前には、必ず中身を確認することをおすすめします。
MCPとAgent Skillsはどう使い分けるべきか
結論から言うと、MCPとSkillsは補完関係にあり、どちらか一方ではなく両方使うのが良いです。
MCPが得意なこと
- 外部システムへのアクセス: データベース、API、ファイルシステム
- リアルタイムデータの取得: Slackのメッセージ、GitHubのissue
- 外部システムでのアクション実行: 通知送信、レコード作成
つまり、「接続」の部分はMCPの仕事です。
Skillsが得意なこと
- 複数ステップのワークフロー: 会議準備、リサーチ、分析
- 一貫性が求められる処理: 財務分析、コンプライアンスレビュー
- ドメイン知識の共有: 業界のベストプラクティス、社内の標準
- チームで再利用する知識: 退職しても残る、組織の資産
つまり、「使い方」「ノウハウ」の部分はSkillsの仕事です。
実際のところ
Claudeのブログによると、「MCPはハードウェアストアの商品棚、Skillsは店員の専門知識」という比喩がわかりやすいです。
You walk into a hardware store looking to fix a broken cabinet. The store has everything you need (wood glue, clamps, replacement hinges) but knowing what items to buy and how to use them is a different problem.
MCP is like having access to the aisles. Skills, meanwhile, are like an employee's expertise. All the inventory in the world won't help if you don't know which items you need or how to use them. A skill is like the helpful employee who walks you through the repair process, points you to the right supplies, and shows you proper technique.
Put more concretely, an MCP server gives Claude access to your external systems, services, and platforms, while skills provide the context Claude needs to use those connections effectively, teaching Claude what to do now that it has this access.
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壊れたキャビネットを修理しようと金物店に入ったとします。店内には必要なもの(木工用ボンド、クランプ、交換用蝶番など)はすべて揃っています。しかし、どの品物を購入し、どのように使うべきかを知ることは、また別の問題です。
MCPは、店内の棚にアクセスできるようなものです。一方、スキルは従業員の専門知識のようなものです。どれだけ多くの在庫があっても、どの品物が必要で、どう使うのかを知らなければ、役に立ちません。スキルとは、修理のプロセスを説明し、適切な材料を指し示し、正しい使い方を教えてくれる、親切な従業員のようなものです。
より具体的に言うと、MCPサーバーはClaudeに外部システム、サービス、プラットフォームへのアクセスを提供します。一方、スキルは、Claudeがそれらの接続を効果的に利用するために必要なコンテキストを提供し、このアクセス権を得たClaudeに何をすべきかを教えます。
出典:Claude Blog「Extending Claude's capabilities with skills and MCP | Claude」
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一つのSkillが複数のMCPサーバーを使うこともありますし、一つのMCPサーバーに対して複数のSkillを作ることもできます。
たとえば、競合分析のSkillなら
- Google DriveのMCP(社内リサーチ)
- GitHubのMCP(競合のリポジトリ)
- Web SearchのMCP(市場データ)
を組み合わせて使う、といった具合です。
「MCPいらなくなった」は本当か?
冒頭で触れた「Skillsだけ使っててMCP使わなくなった」という声について。
これは恐らく、特定の用途ではSkillsだけで完結する場合があるということだと思います。たとえば以下の例です。
- ドキュメント作成(PowerPoint、Excel、Word)
- コード生成とレビュー
- 文章の校正や要約
これらは外部システムへのアクセスが不要なので、SkillだけでOKです。
しかし、外部データやシステムと連携する必要がある場面では、MCPは依然として必要です。会議準備、CRM連携、データベース分析などはMCPなしでは成り立ちづらいように思います。
むしろ、SkillsとMCPを組み合わせることで、より強力なワークフローが実現できる、というのが正確な理解だと思います。
Anthropicは下記のように整理しています。
Skills(スキル) | MCP(Model Context Protocol) | |
|---|---|---|
それは何か | Claude に与える手続き的知識(やり方・流儀) | Claude と外部世界をつなぐ接続プロトコル |
何をするものか | Claude に「どう進めるべきか」を教える | Claude に「何へアクセスできるか」を与える |
読み込まれるタイミング | 必要になったときだけオンデマンドで適用 | 一度接続すると常に利用可能 |
含まれるもの | 手順、判断基準、スクリプト、テンプレート、アセット | ツール定義、外部リソース、操作用プロンプト |
トークンの挙動 | 必要な分だけ読み込まれ、コンテキストを節約 | 定義が最初に読み込まれ、常駐コンテキストになる |
最適な用途 | ワークフローの定義、標準化、方法論の共有 | データ取得、API 呼び出し、外部システム操作 |
課題と制約
良いことばかり書いてもアレなので、現状の課題も。
クロスプラットフォームの制約
- Claude.aiでアップロードしたSkillは、APIでは使えない
- APIでアップロードしたSkillは、Claude.aiでは使えない
- Claude Codeは独自のファイルシステムベース
今のところ、各プラットフォームで個別に管理する必要があります。
共有の仕組み
- Claude.ai: 個人ユーザーのみ、チーム共有は不可
- API: ワークスペース全体で共有可能
- Claude Code: 個人またはプロジェクト単位
企業で使う場合、この共有の制約は結構大きいかもしれません。
ランタイム環境の制限
- Claude.ai: ネットワークアクセスは設定次第
- API: ネットワークアクセスなし、パッケージインストールも不可
- Claude Code: フルアクセス可能
用途によっては、この制限が足かせになることもありそうです。
セキュリティについて
Skillsは強力だからこそ、セキュリティに注意が必要です。
Anthropicのエンジニアリングブログでは、セキュリティの重要性が強調されています。悪意のあるSkillは、Claudeに意図しないファイルアクセスやデータ漏洩を実行させる可能性があるからです。
信頼できるソースからのSkillsのみを使用することが推奨されています。
- すべてのバンドルファイルを確認する(SKILL.md、スクリプト、画像など)
- 外部ネットワークに接続する指示やコードに特に注意
- コードの依存関係をチェックする
- 信頼性の低いソースからインストールする場合は、徹底的に監査する
ソフトウェアをインストールするのと同じ慎重さが求められるので、これらは常に行った上で利用することをおすすめします。
Skillsの開発ベストプラクティス
Anthropicのエンジニアが推奨する、Skillの作り方のコツをいくつか紹介します。
評価から始める
いきなりSkillを作るのではなく、まず「Claudeがどこで困っているか」を観察することが大切です。代表的なタスクを実行させて、つまずくポイントや追加のコンテキストが必要な場面を特定する。そこからSkillを段階的に構築していく、というアプローチです。
スケールを考えた構造設計
SKILL.mdが大きくなりすぎたら、内容を別ファイルに分割して参照する形にします。相互に排他的なコンテキストや、めったに使われないコンテキストは、パスを分けることでトークン使用量を削減できます。
コードは、実行可能なツールとしても、ドキュメントとしても機能します。Claudeがスクリプトを直接実行すべきか、それとも参照として読み込むべきかを明確にしておくことが重要です。
Claudeの視点で考える
実際のシナリオでClaudeがSkillをどう使っているかをモニターし、観察に基づいて反復改善します。予想外の動作や、特定のコンテキストへの過度な依存に注意を払います。
特に、Skillのnameとdescriptionは重要です。Claudeはこれを見て、現在のタスクに対してそのSkillをトリガーすべきかどうかを判断するからです。
Claudeと一緒に反復開発する
タスクに取り組む中で、Claudeに「うまくいったアプローチや、よくある間違いを、再利用可能なコンテキストやコードとしてSkillにまとめて」と頼むことができます。また、Skillを使っている最中にうまくいかなかったら、「何が間違っていたか自己分析して」と聞くこともできます。
このプロセスを通じて、事前に想定するのではなく、Claudeが実際に必要とするコンテキストを発見できるというわけです。
cookbookも公開されているので参考に試してみてください!
おわりに
Agent SkillsとMCPについて調べてわかったことをまとめると以下になります。
- MCPは「接続」を担当し、Skillsは「使い方」を担当する
- どちらか一方ではなく、両方を組み合わせるのが最も強力
- 「MCPいらなくなった」は誤解で、用途次第
- 今後、エコシステムとして大きく成長する可能性がある
まだ初期段階の技術なので、今後どう進化していくかは要注目です。クロスプラットフォームの制約が解消されたり、公式のSkillsマーケットプレイスができたりすると、さらに面白くなりそうですね。
MCPやSkillsを試したことがない方は、まずは公式の事前構築Skillsから触ってみることをおすすめします。ウェブやアプリのClaudeにはすでに入っているはずです。
参考リンク
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