自律型AIエージェント開発フレームワークElizaに入門してみた

今回はElizaを少し触りながら勉強したいことをもとにまとめていきたいと思います!
Elizaとは何か
最近、AIエージェントの進化が加速していて、その中でも注目されているのがElizaというフレームワークです。Elizaは、TypeScriptで構築されたマルチエージェントシミュレーションフレームワークで、自律型AIエージェントを作成・デプロイ・管理するための柔軟なプラットフォームを提供しています。
複数のプラットフォームにまたがって一貫したパーソナリティと知識を維持しながら、より自然で賢いエージェントを開発が可能で、ChatGPTやClaudeとの対話とは違い、Elizaを使えば自分だけのAIエージェントを作り出し、それに独自の個性や専門知識を与えることができます。
Elizaの主要機能
Elizaが他のAIフレームワークと一線を画しているのは、その包括的な機能セットにあります。
プラットフォーム統合とモデルサポート
Elizaの魅力的な点は、多様なプラットフォームとモデルをサポートしていること。Discord、X (旧Twitter)、Telegram、Slackなどの主要なプラットフォームと統合できるので、同じAIエージェントを複数の場所で動かせます。
モデル面では、OpenAI、Anthropic(Claude)、Deepseek、Ollama、Grok、Geminiなど、ほぼすべての主要な生成AIモデルをサポート。さらに面白いのは、モデルプロバイダーを簡単に切り替えられる点で、ある場面ではClaudeを使い、別の場面ではLlamaを使うといった柔軟な運用も可能です。
キャラクターシステムとマルチエージェント機能
Elizaの中核となるのが「Character Files」と呼ばれるキャラクター定義システム。これを使えば、エージェントの性格、バックストーリー、知識ベース、対話スタイルまで細かく設定できます。
例えば、技術の専門家、物語の語り手、カスタマーサポート担当者など、様々な役割を持つエージェントを作成できます。しかも、複数のエージェントを同時に動かして、それぞれに異なる設定を与えることも可能。これによって、例えば複数のキャラクターが会話するシナリオや、異なる専門知識を持つエージェント間の協力といった複雑なインタラクションを実現できます。
Character FilesはJSONファイルで、各フィールドに入力する値はかなりキャラクターの設定として重要なものになります。詳しくはドキュメントまたはYoutubeで公開されている動画を見てみるのがおすすめです。
アーキテクチャの基本
Elizaのアーキテクチャは、モジュール性と拡張性を重視して設計されています。
エージェントランタイムと主要コンポーネント
Elizaのコアとなるのは「Agent Runtime」(src/runtime.ts
)で、これはエージェントの頭脳として機能します。メッセージ処理、メモリ管理、状態構成、アクション実行、AIモデルと外部サービスの統合を調整する中央レイヤーとして働きます。
主要コンポーネントとしては3つの重要な概念があります。
- Actions
エージェントが実行できる操作を定義します。メッセージへの応答方法、外部システムとの対話、メディア処理などを可能にします。ツールボックスのツールのようなものだと考えるとわかりやすいかも。
- Evaluators
会話を監視し、エージェントが規則とガイドラインに従っているかを確認します。事実抽出、目標追跡、記憶構築、関係管理を通じて、エージェントの応答を向上させる役割を担います。
- Providers
エージェントに外部情報を供給します。外部APIを統合し、時間認識を管理し、システムステータスの更新を提供することで、エージェントがより良い判断を下せるよう支援します。
たとえば最新のニュースを取ってくるとか、自分のウォレット残高を持ってくるなどができ、現実世界とリンクさせることができます。
メモリと知識管理
Elizaの強みの一つはメモリシステムです。「Memory Manager」は最近の会話、重要な事実、ユーザーとのやり取り、現在の議論の即時コンテキストを覚えるのに役立ちます。
知識システムは、情報を検索可能なチャンクに整理し、ベクトル埋め込みに変換し、関連性に基づいて取得し、応答を強化するためのエージェントの「ライブラリ」として機能します。RAGモードを有効にすると、ドキュメントのチャンク化、埋め込み、ベクトル検索による高度な知識処理が可能になります。
このメモリと知識の組み合わせにより、エージェントは一貫性を保ちながら、状況に応じた適切な情報を引き出すことができるようになるんです。
キャラクターファイルの作成
キャラクターファイルはElizaの根幹とも言える部分です。ここでは、実際にキャラクターファイルをどう作成するのか、その基本を見ていきましょう。
基本設定とパーソナリティ定義
キャラクターファイルはJSON形式で、最低限以下のフィールドが必要です。
{
"name": "character_name",
"modelProvider": "anthropic",
"clients": ["discord", "direct"],
"plugins": [],
"settings": {
"ragKnowledge": false
},
"bio": [],
"style": {
"all": [],
"chat": [],
"post": []
}
}
特に重要なのはbio
とstyle
の設定です。bio
にはキャラクターの基本的な情報や個性を記述します。
面白いのは、これを配列で複数記述できること。Elizaは各応答時にランダムにこれらを選んで組み合わせるので、応答にバリエーションが生まれ、エージェントがより自然になります。
temperatureを低めに設定し、的確なランダム性を入れるようにしてるようです。
"bio": [
"AIエージェント開発の専門家",
"TypeScriptとPythonが得意",
"自律型エージェントの可能性を追求している",
"ユーモアのセンスを大切にする"
]
知識とスタイルの設定
knowledge
フィールドでは、エージェントが参照できる知識を定義します。RAGモードを有効にすると、会話中にこれらの知識から関連情報を検索して回答に組み込めるようになります。単純な文字列だけでなく、ファイルパスやディレクトリを指定することもできます。
"knowledge": [
"AIエージェントはシンプルなチャットボットと異なり、自律的に判断し行動できる",
{ "path": "technical_docs/agent_theory.md", "shared": false },
{ "directory": "knowledge/articles", "shared": true }
]
下記にあるfolder2knowledgeなどで適当なファイルをknowledgeにしそのまま入れるのも選択肢として用意されているみたいです。
style
セクションでは、エージェントの応答スタイルを定義します。ここも配列で複数指定でき、これらがランダムに選ばれて応答に影響します。
"style": {
"all": [
"簡潔かつ正確に説明する",
"必要に応じて例を挙げて説明する"
],
"chat": [
"対話的で親しみやすい口調を使う",
"質問には丁寧に答える"
],
"post": [
"情報密度の高い投稿をする",
"興味を引くような書き出しを心がける"
]
}
応答例とポスト例の活用
キャラクターの一貫性をさらに高めるには、messageExamples
とpostExamples
を設定するのが効果的です。これらは会話やソーシャルメディア投稿の例を提供し、エージェントがその形式や調子を学習するのに役立ちます。
"messageExamples": [
[
{
"user": "{{user1}}",
"content": { "text": "AIエージェントについて教えて" }
},
{
"user": "TechAgent",
"content": {
"text": "AIエージェントは自律的に動作するAIシステムです。単なる応答だけでなく、判断して行動できるのが特徴ですよ。"
}
}
]
]
postExamples
は数千件レベルで用意するとよいみたいです。
例えば、Twitter scraper fine tuneを使えばレートリミットを超えない範囲で特定のアカウントのツイートを何千件も取得できる。それを全部貼り付けるというやり方もあります。
活用シナリオシーン
Elizaを使って作れるエージェントは多岐にわたると思います。
- AIアシスタント
カスタマーサポート、コミュニティモデレーター、パーソナルアシスタントなど、特定の業務を支援するエージェント。
- ソーシャルメディアペルソナ
自動コンテンツ制作者、ブランド代表、インフルエンサーなど、オンラインでのプレゼンスを維持するエージェント。
- ナレッジワーカー
リサーチアシスタント、コンテンツアナリスト、ドキュメント処理担当などの知識労働を担うエージェント。
- インタラクティブキャラクター
ロールプレイングキャラクター、教育チューター、エンターテイメントボットなど、特定の役割を演じるエージェント。
実際にTwitter上で見かけるAIアカウントの中には、Elizaのようなフレームワークを使って構築されています。その自然さと一貫性は、単なるAPIコールよりもずっと高度なものを実現しています。
まとめ
Elizaは確かにまだ発展途上のフレームワークではありますが、その柔軟性と拡張性には大きな可能性を感じています。Typescriptで書かれているのも好印象。
Elizaでは、エージェントが仮想通貨を作成したり、自身でプロジェクトを運営したりと経済活動を行うことも可能にできるみたいなので、今後はそのあたりも触ってみたいなと思っています。