【初学者向け】レイヤードアーキテクチャの基礎を理解しよう
はじめに
みなさんは「レイヤードアーキテクチャ」という言葉を聞いたことがありますか?
レイヤードアーキテクチャは多くのWebアプリケーションで採用されている、とても基本的な設計パターンです。この記事では、レイヤードアーキテクチャの基礎を、ECサイトを例に挙げながら分かりやすく解説していきます。
レイヤードアーキテクチャって何?
レイヤードアーキテクチャは、アプリケーションを「層(レイヤー)」と呼ばれる複数の階層に分けて設計する方法です。
身近な例で例えると...
- デパートの階層構造に似ています
- 1階:食品売り場(お客様との接点)
- 中間階:衣類・雑貨売り場(商品の管理・展示)
- 地下:バックヤード(在庫管理・仕入れ)
それぞれの階が特定の役割を持っているように、アプリケーションも役割ごとに層を分けて管理します。
レイヤードアーキテクチャの基本構造:ECサイトを例に
レイヤードアーキテクチャでは、各レイヤーが特定の作業に特化し、他のレイヤーの詳細を気にせずに開発できるように設計します。
ECサイトを例に、各層の役割と実装を見ていきましょう。商品の割引価格を表示する機能を通じて、それぞれの層がどのような仕事を担当するのかを理解していきます。
1. プレゼンテーション層
責務:表示に関する処理のみを担当
- 商品価格の表示方法(赤字表示など)の定義
- ビジネス層から受け取った価格データの表示
- 重要: 割引計算の方法は知る必要がありません
実装例:
class ProductDisplay {
showPrice(price: number) {
// 価格の表示方法だけを定義
return `<span class="discount-price">¥${price}</span>`;
}
}
2. ビジネス層
責務:割引計算に関する処理のみを担当
- 会員ランクに応じた割引計算の実装
- 価格データの加工処理
- 重要: データベースやAPIの詳細は知る必要がありません
実装例:
class DiscountCalculator {
calculatePrice(originalPrice: number, memberRank: string) {
// ビジネスロジック(割引計算)だけを実装
const discount = this.getDiscountRate(memberRank);
return originalPrice * (1 - discount);
}
}
3. データ層
責務:データの保存と取得のみを担当
- 商品データの保存処理
- 価格データの取得処理
- 重要: 画面表示方法や割引計算は知る必要がありません
実装例:
class ProductDatabase {
getProductPrice(productId: string) {
// データの取得処理だけを実装
return database.query("SELECT price FROM products WHERE id = ?", [productId]);
}
}
このような設計のメリット
このように処理を層に分けて設計することで、以下のような利点が得られます
- 変更に強い設計
- 他の層の変更の影響を受けにくい
- 例:データベースをMySQLからPostgreSQLに変更しても、表示層は変更不要
- 効率的な開発と保守
- 問題が発生した時、確認すべき場所が明確
- 修正による影響範囲が限定的
- チーム開発の効率化
- 役割分担がしやすい
- それぞれの専門知識を活かしやすい
- 並行して開発作業を進められる
いつレイヤードアーキテクチャを使うべき?
レイヤードアーキテクチャは以下のような場合に特に適しています
- 小規模〜中規模のアプリケーション開発
- 開発期間や予算が限られている場合
ただし、アプリケーションが大規模になってくると、より細かく分割された別のアーキテクチャパターンの採用を検討する必要があります。
まとめ
レイヤードアーキテクチャの重要なポイントをおさらいしましょう
- アプリケーションを役割ごとの層に分ける
- 各層は自分の担当する仕事に集中する
- シンプルで理解しやすい設計パターン
- 小規模〜中規模のアプリケーションに適している
次のステップとして、実際のプロジェクトでレイヤードアーキテクチャを試してみることをおすすめします。まずは小さな機能から始めて、徐々に理解を深めていきましょう(`・ω・´)