Twentyの会議録画アプリを支える会議ボットAPI「Recall.ai」を調べた

村井 謙太

代表取締役

村井 謙太

Twentyの会議録画アプリを支える会議ボットAPI「Recall.ai」を調べた

オープンソースCRM「Twenty」について、ローカル環境構築アーキテクチャSalesforce比較と書いてきました。その続きを検証していたある日、Google Meetの会議に「Twenty.com」という見知らぬ参加者が入ってきました。

正体はTwenty公式の録画アプリ「Call Recorder」のボットでした。調べていくと、Twentyの会議録画は「会議ボットAPI」という部品市場の上に載っていて、Call Recorderの裏側にはその最大手であるRecall.aiがいることがわかりました。

この記事では、Call Recorderの仕組みと止め方、裏側にいるRecall.aiを調べた結果をまとめます。セルフホスト環境での設定も試しました。情報は2026年7月時点のものです。

勝手に会議へ入ってくる「Twenty.com」の仕様

Call RecorderはTwenty公式の録画アプリで、ソースはTwenty本体のモノレポに含まれています。カレンダー同期済みのビデオリンク付き予定へ録画ボットを送り込み、録画・文字起こし・AIサマリをCRMのレコードとして残します。営業会議の録画解析SaaSであるGongや、AI議事録SaaSのCircleback(エニークラウドでも使っています)が提供する機能の入り口部分が、CRM本体に直接載るイメージです。

知っておくべき仕様は、フィールド定義に書かれたこの一文です。「Call recording is on by default when the app is installed」——アプリを入れた時点で、ビデオリンク付きの予定はすべて録画ONになるopt-out方式です。予定ごとにcalendarEventの「Recording Bot」フィールドをOFFにすれば録画されません。ボットの表示名のデフォルトは「Twenty.com」で、冒頭の見知らぬ参加者の正体はこれでした。

ボットはカレンダーに招待されて来るわけではありません。カレンダー同期でTwentyが会議URLを知り、そのURLへ外部ゲストとして参加しに来ます。Meetで参加リクエストを許可すると入室する、普通の参加者と同じ経路です。

課金はTwentyクレジットで録画1時間あたり$1.00、録画しなかった会議(OFFにした・不成立だった)には課金されません。AIサマリはワークスペースのAIクレジット消費で、既定モデルなら1会議$0.02〜0.06程度とREADMEにあります。

録画がCRMに届くまで

アプリの動きは次の5ステップに集約されます。

Call Recorderアプリの動作フロー。カレンダー同期から録画レコード完成まで5ステップ

ポイントは録画データの置き場所です。動画・音声・文字起こしはRecall.aiからTwenty自身のストレージへ取り込まれるので、Recall.ai側の保持期限(約7日)が切れても手元に残ります。AIサマリもTwenty本体のAI基盤で生成されるため、外部のLLMキーを別途用意する必要はありません。予定のリスケやキャンセルにはボットの予約が自動で追従します。

会議ボットAPIの最大手「Recall.ai」

Call Recorderが裏で使っているRecall.aiは、SF拠点・YC出身の会議ボットAPI専業ベンダーです。2025年9月にSeries Bで$38Mを調達(評価額$250M、HubSpot VenturesとSalesforce Venturesも参加)していて、顧客は2,000社超、HubSpotやClickUpも利用しています。

Recall.aiの公式サイト。会議からトランスクリプト・録画・メタデータを取得するAPIを掲げる

価格は2026年に録画$0.50/時+文字起こし$0.15/時へ値下げされ、月額プラットフォーム料も撤廃されました。対応の広さもエンタープライズ向けの構えで、Meet・Zoom・Teamsに加えWebexやSlack Huddlesまでカバーし、SOC 2/HIPAA準拠、ボット無しで録音するデスクトップSDKも提供しています。

一強というわけではなく、セルフサーブとオープンコア路線で対抗するパリ発のMeeting BaaS(録画+文字起こしで$0.44〜0.63/時とほぼ同水準)や、完全OSSのAttendeeもいます。Twenty Cloudが録画1時間$1.00で提供できる背景には、この部品市場の価格競争があります。

セルフホストのTwentyで動かすには

セルフホスト環境(Railwayにデプロイ)でCall Recorderを試したところ、アプリをインストールすると管理画面の Settings → Applications にあるアプリ登録ページへserver variablesを入力する形でした。必須はRECALL_API_KEY(自分のRecall.aiのAPIキー)とRECALL_WEBHOOK_SECRET(webhook署名シークレット)の2つで、リージョンはデフォルトがeu-central-1です。

webhookはRecall.aiのダッシュボード側で、自分のデプロイの/webhooks/server/<関数ID>へ向けたエンドポイントを作成し、bot.status_changeやrecording.doneなどのイベントを購読させます。手順はSETUP.mdにまとまっています。

つまりセルフホストではRecall.aiの契約が自前になります。Twenty Cloudのクレジット課金($1.00/時)の代わりに、Recall.aiへ直接$0.50/時+文字起こし$0.15/時を払う構図です。

所感

公式アプリですらボットを自作せず、Recall.aiから買っているのが今回いちばんの発見でした。CRM本体は録画機能を抱え込まず、アプリ基盤の部品でGong的な機能の骨格を組み、ボットという重いインフラはAPIで外から調達する分業です。

その部品の価格がRecall.aiとMeeting BaaSの競争で録画+文字起こし$0.5〜0.65/時まで下がっているのも実務的に重要です。営業会議の録画を全部残しても月数十ドルの世界なので、「Circlebackのような議事録SaaSを人数分契約する」のと「CRMに直接録画が載る」のを比べる段階に来ています。

一方でデフォルト録画ONの仕様は、知らないと今回の私のように「見知らぬボットが会議に入ってくる」体験になります。録画し忘れないためのopt-out設計と考えれば合理的なので、導入するならチームへの周知と、録画したくない予定をOFFにする運用をセットにすれば十分です。

記事を書いた人

村井 謙太

代表取締役

村井 謙太

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東京大学在学中にプログラミング学習サービスのProgateを立ち上げ、CTOとしてプロダクト開発に従事。 Progate退任後に株式会社Anycloudを立ち上げ、現在は多数のクライアントの技術支援を行っている。