プレゼンテーション自動生成ツールを使ってみた(Gamma・イルシル)
はじめに
Anycloudのなんぶと申します。
普段は、プロダクト・マネージャーとして、クライアントの方とコミュニケーションをとりながらプロダクト開発をご支援しています。
役割的に、新規のお客様にAnycloudをご紹介することも多いのですが、そこで必要となるサービスに関するスライド資料は、私が作成しています。
ですが私、実はスライド作成に自信がありません。何が正解か、これでいいのか、といつまでも迷ってしまって、なかなかゴールできません。
箇条書きで構成を作るのは結構得意なのですが、それをビジュアル化することに関しては非常に苦手と自負しています(?)
苦手だからと、いままであまりやってこなかったスライド作成。しかし、いまや「スライド生成AI戦国時代」!?
巷(X)では、毎日のように「スライドをAIで一瞬で作る方法」といった言葉が飛び込んできます。
ペーパードライバーたちが、いまや遅しと自動運転を待っているかのように、私は自動スライド作成を待っていたのです。
というわけで、今回は2つのスライド作成AIをご紹介します。
今回ご紹介するツールの概要
Gamma
Gammaは、先進的なスライド作成ツールです。スライドだけでなく、ドキュメントやWebページも作成できます。
イルシル
イルシルは、国産のツールで、日本語サポートや、日本的なスライド様式を強みとしています。
いずれのツールも、日本語でテキストを入力するだけで、スライドを一瞬で作成してくれます。当然それで完成、とはいかないので、それを叩きとして、人がAIと協業しながら、あれやこれやと修正を加えていきます。
よって、スライド作成ツールの使い勝手は、最初の「叩き作成」までのUXと、叩きを修正していく過程のUX、の2つが大きなポイントとなるでしょう。
ぜひ皆様も使ってみてください
この記事では、使い方の説明ではなく、私が使ってみて感じた、それぞれの特徴、どういう人に役立ちそうか、などをお伝えしていく予定です。
どちらも無料ですぐに始められますし、直感的に使えるので、ぜひこの記事を読んだあとに使ってみてください。
Gammaは最初に付与されるクレジットを使い切るまで無料で使えます。
イルシルは無料の場合、作成したスライドのダウンロードができないなど機能制限がありますが、基本的な機能は使えますし、2週間の無料トライアルもあります。
今回作りたいスライド
今回はどちらのサービスでも、箇条書きのスライド構成案を渡し、スライドを作ってもらう工程を試します。
題材は、Anycloudの「専門家AI PoC支援サービス」についてです。 少しわかりにくいですが、従来の業務を自動化するツールを、現場の方と一緒にPoCをしながら開発していくサービスです。
ツールに渡す箇条書きはこちらにしました。
- Anycloudの「専門家AI PoC」
- 専門領域のAIツールを実現する短期集中のPoC開発支援
- このような課題はありませんか?
- 生成AIの活用が社内で話題になっているが、どう活用すればよいかわからない
- 日頃のルーティン作業を効率化したいが、実現方法がわからない
- AIを使った新規事業の企画があるが実現可能性を検証したい
- Anycloudが、課題整理、業務フローの洗い出し、自動化・効率化の企画からサポートし、実際に短期間でPoC開発を行います。
- PoCとは
- PoC = Proof of Concept
- 実際に触れるプロトタイプを開発し、企画の実現可能性を検証します。
- 大規模な投資に踏み切る前に小さく仮説検証を行うことができます。
- 3ヶ月300万円程度でプロトタイプを完成できます。
- PoC後、本格開発への移行もスムーズにできます。
- 定義をまず説明し、そのあとに、3つのメリットとして、「大規模な投資に踏み切る前に小さく仮説検証を行うことができます。」「3ヶ月300万円程度でプロトタイプを完成できます。」「PoC後、本格開発への移行もスムーズにできます。」を説明してください。
- アジャイルなPoCサイクル
- Learn
- 業務フローや課題、専門知をヒアリングし、ソリューションの仮説を作ります。
- Build
- ソリューション仮説をもとに、実際に触れるプロトタイプを開発します。
- Measure
- プロトタイプを使い、実際に現場のユーザーとテストを行います。
- 3ヶ月間の短期PoC開発の流れ
- STEP1: ヒアリング
- 現在の課題や、ルーティン化されている作業内容、業務フローなどを大まかに整理します。
- STEP2: スコープ設定
- 短期間で検証すべき、コアな価値をクライアント様と見定め、PoCを実施するスコープ(作業内容)を決めます。
- STEP3: 開発イテレーション(①〜③を2週間程度のサイクルで回していきます。)
- ① Learn:
- 費用対効果の低い作業内容、詳細な業務フロー、専門家の思考過程などを細かく整理し、ワイヤーフレームの作成や、プロンプトの設計などを行います。
- ② Build:
- 実際にプロトタイプの開発を行います。
- ③ Measure
- プロトタイプを触ってもらいながら、改善点や課題の洗い出しを行います。
- Learn・Build・Measureが循環するサイクルであるようにわかりやすく表現してください。Measureのあとに再びLearnに戻ることを図示してほしいです。一本のライン上に乗せるのではなく、循環する形で表現して欲しい。
- 活用可能性の高いドメインについて
- 広告クリエイティブのリーガルチェック
- お問い合わせ内容の要約・分類
- 履歴書の審査
- etc.
- 使用する技術例
- OCR(画像認識)
- 音声合成
- 翻訳、要約
- 社内FAQ
- 画像生成
- 開発言語
- Node.js, Python
- AWS, GCP, Azure
- Open AI API, Claude API
- 事例紹介
- 某弁護士事務所(都内)との、広告クリエイティブのリーガルチェックツールの開発における課題を説明しているので、そのように構造を変更してください。
- 主な課題
- クライアントからのリーガルチェック依頼が、日々大量に発生し、ルーティン作業にも関わらずコストの高い作業となっていた。
Gammaを使ってみる
テキストベースの構成案から、スライドを作成する
それでは実際にスライドを作ってみます。
① Create new(AI)
② Paste in text
③ テキストエリアに箇条書きの構成案をペースト
これだけで以下のようなスライドを作成してくれました。
スライドに挿入する画像は、AIによる生成イラスト、フリー素材、商用可能なフリー素材を選択することができます。
AIの生成イラストは個人的にビジネスシーンの資料に気に入るものがアウトプットされなかったため、上の例では商用可能なフリー素材を指定しています。
スライドを改善していく
Gammaでは、AIの力を借りながら、スライドを編集していくことができます。
例えば、以下のスライドでは、PoCとそのメリットを説明したいところですが、定義、プロトタイプ開発、小規模検証という要素がすべて並列に見えてしまっています。
そこで、スライドの「Edit with AI」から、PoCの定義をまず説明し、そのメリットを3つに分けて説明してもらうように指示を出してみました。
すると、以下のようにAIがスライドを編集してくれました。これはかなり意図通りの修正となっています。
右カラムのチャットで、より対話的に修正を加えていくこともできます。
このように、AIと対話し、案をだしてもらいながら修正を進めていくことができます。
ただ、現在(2024/08/08)、Gammaの日本語入力にはまだ難があるようで、日本語の変換確定時に文字が送信されてしまい、対話がスムーズにできませんでした。
これはかなりストレスで、対話を放棄してしまうので、今後の改善に期待です。
余談: Gammaの”これいる?”な機能
Gammaには、「◯◯に関する資料を作って」と指示するだけで、それっぽい資料を作ってくれる機能があります。
ただ、これは正直あまり利用シーンはないように思います。
何も情報や意図を持たずにスライドを作り始めることはないでしょうし、これを使っても手戻りが多いような気がします。
スライド生成AIを体験してもらうための、おもしろ機能として実装したのかもしれません。
現時点では、スライドの構成自体は、Chat GPTなどと相談しながら作った上で、Gammaに投げ込むのが良いでしょう。
その他の印象
Gammaは、AIツールという以前に、PowerPointやGoogle Slideといった従来のプレゼンテーションのあり方を再定義したものという印象があります。
例えば、一つのスライドの中で別のスライドを入れ子にできたり、figmaや問合せフォームを埋め込むことができたり。
スライドを作っているというより、Notionで文書を作っていくような体験に近いものです。
実際Gammaでは、「ドキュメントのように制作し、スライドのようにプレゼンする」という説明も登場します。
他にも、チーム内でコラボレーションしやすい機能や、アナリティクス(ページごとの閲覧者のエンゲージメント率など)など、従来のスライド作成にはなかったUXが持ち込まれています。
イルシルを使ってみる
テキストベースのスライド構成から、スライドを作成する
① AIスライド生成
② 「メモからスライドを生成」
③ タイトルを入力
④ 箇条書きのスライド構成を入力
イルシルはこの箇条書きから、いきなりスライドを作成するわけではなく、構成の時点で編集を加えることができます。
これをもとにイルシルが作ってくれたスライドがこちらです。
いかがでしょうか?
イルシルが作るスライドは、いい意味で既視感があるように感じます。
日本的なスライド様式で、情報も伝わりやすく、実際にビジネスで使うには、イルシルから作成したほうが早いかもしれません。
スライドを改善していく
以下のスライドで、「履歴書の審査」の例がボディに含まれていないので追加してみます。
入力モード切替から、テキストベースの構成を修正することができます。
該当の構成には、現在「履歴書の審査」が入っていません。
以下のように追加し、「スライドに反映」。
すると、以下のようなスライドになりました。
イルシルでは動画のように、スライドの表現案をいくつも用意してくれているので、それをみて自分の気に入るものを適用するのがとても楽です。
個人的な感想
現時点では、イルシルの方が使いやすいと感じました。
その理由は2つで、一つはイルシルが、既存のスライド制作フローをサポートするようなツールであること、もう一つは日本的な様式に最適化されていること。
これによって、テキストで構成案を渡すだけで、「丁度よい」叩きがアウトプットされ、使い勝手のよいテンプレートに基づいて制作を進められました。
あくまでも、自分のアシスタントとして働いてくれる印象です。
Gammaは、スライドの挿入画像や、デザイン面で、AIによる「創作」がより広範囲に及んでいます。現時点ではそれに伴う違和感(コレジャナイ感)をどうしても感じてしまいました。
そもそも、プレゼンテーションスライドのあり方や、制作フロー自体を根本から変えていくことを目指したプロダクトだと思います。
そのため、プレゼンテーション制作自体を楽しみたい、新しいスタイルのプレゼンテーションを作りたい、という方にはおすすめできると思います。
従来のPowerPointやGoogle Slideに慣れすぎてしまっている方や、シンプルでいいからぱっと資料を作りたいだけ、という人には、新しすぎて合わないかもしれません。
最後に
AIを業務に取り入れていくとき、その考え方は大きく2つあると思います。
一つは「既存の業務フローの一部をAIで自動化する」か、「AIに最適化した形に業務フロー自体を変える」か。
イルシルは前者の思想、Gammaは後者の思想だと感じます。
現在は前者のようなサービスの方が、ユーザーの受け入れは早いでしょう。しかし、長期でみるともしかしたらGammaのような新しい業務フローに変わっていくのかもしれません。
スライド作成ツールは、今後もっと進歩していくはずです。
実際には、AIによる生成機能の部分だけでなく、スライドのテンプレートやコンポーネントの豊富さ、AIと対話するインターフェースなど、純粋に気持ちよくスライドが作れるUXが非常に重要になるでしょう。
とても楽しみです。